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積立王子・中野晴啓氏「インフレ下はアクティブ優位」

新会社や新商品について熱く語る中野さん(写真/工藤朋子)

 

最近、注目すべきアクティブファンドが続々と新規設定されている。当連載では3回に渡り、日本株の銘柄選びの達人である3人の運用者に、個別株投資にも役立つノウハウを伝授してもらう。敏腕ファンドマネジャーから投資法を学び、勝ちワザを見つけよう。

 

昨今、新NISA(少額投資非課税制度)の開始やコスト面などからインデックス型ファンドの人気が勢いを増しているが、「積立王子」の愛称でも知られる中野晴啓さんは「今後はアクティブの時代!」と熱弁する。中野さんは実際に4月25日、なかのアセットマネジメントを設立後、初めてアクティブ型のファンド2本を新規設定した。

 

「高インフレなどの市況変化に伴い、今はインデックス運用優位からアクティブ運用優位の時代への変革期。そんな今こそ企業研究を重ね、アクティブ運用によって『すてきな会社』をより強くしていきたい」と語る。その趣旨を、有望な会社の選び方なども踏まえて詳しく教えてもらった。

 

中野さんが教える「市場環境で変わる銘柄選び」

 

リーマン・ショックやコロナ禍など、「景気が悪くなれば金融緩和」という流れが続いていました。緩和により余ったマネーは株式市場に流れ、銘柄選択がされずに全体が買われることにより、市場全体の株価が上昇。そのため、企業を研究して銘柄を選ぶアクティブ型ファンドの効果が薄れ、インデックス型が優位に。機関投資家や日銀、年金運用もインデックス運用を選択しました。

 

流れが変わったのはロシアによるウクライナ侵攻です。世界的な資源高でインフレの時代に突入し、会社の良しあしで株価に差がつく環境は、アクティブ運用に追い風だと感じました。

 

 

インフレが進むと、「物価上昇分くらいは」と値上げを考える企業は多いのですが、実はどの企業でも値上げができるわけではありません。値上げしても「その企業の製品を買いたい」と思わせる価格支配力が必要です。

 

価格支配力のある強い会社は値上げができ、利益や株価がインフレに打ち勝っていきますが、多くの会社は値上げができず、利益や株価の上昇は難しいのです。このようにインフレ下では会社の力の差がついていき、本質を見て選ぶアクティブ運用の効果が大きくなります。

 

歴史ある企業の多くは祖業を続けていますが、祖業の利益率が低いケースも少なくありません。その事実を受け止め、改善しようと意識しているかが重要。例えば富士フイルムHDは、祖業の写真から医療やバイオに多角展開し、将来を見据えた経営力と判断力があります。

 

また、近年は日立製作所のような大企業も事業構造を見直し、生まれ変わりました。長期的な目線で経営に取り組み、未来ある事業で将来に稼ぐ力を持っているかを銘柄選択の基準としています。

 

 

利益がどう伸びているかの確認は重要です。突然伸びている場合はリストラや事業の売却など、短期的な要因によるものもあり、要注意です。売り上げと利益がセットで安定的に伸びていれば、価値あるすてきな製品を作って世の中から支持が増えている証拠になります。

 

つまり、売り上げが伸びる過程で自然に利益が増えるのが企業成長の理想です。その企業が大事にしている事業が、きちんと売り上げを増やしているかについても注視しています。

 

ようやく勢いを取り戻した日本株のこれからには、大いに期待しています。確かに米国株のインデックスの伸びは驚異的ですが、今後の値上がり期待では日本の方が勝るという考え方もあります。今後の日本株の成長の一端をアクティブファンドが握ると言っても過言ではありません。

 

アクティブファンドによっていい会社が目立つようになれば、資金が国内外から流入し、その企業の事業拡大だけでなく、市場全体の拡大にもつながると信じています。