NYダウ1年ぶり8日続伸、警戒緩和 「短期的な反発」か
【ニューヨーク=佐藤璃子】1日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比83ドル(0.2%)高の4万0752ドルで終えた。8日続伸し、2024年5月以来、約1年ぶりの続伸記録となった。トランプ米政権の関税の緩和期待や米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の解任要求の取り下げなどが市場の警戒感を和らげた。ただ、政策の不透明性は変わらず「短期的な反発に過ぎない」と慎重な見方も多い。
ナスダック総合、相互関税の発表前水準に
1日は、前日夕に予想を上回る好調な1〜3月期決算を発表したマイクロソフト(8%高)やメタ(4%高)が上昇をけん引した。トランプ政権の関税政策がテック銘柄の収益の重荷になるとの懸念が薄らいだ。
米株相場はトランプ米大統領が相互関税を発表した4月2日以降、大幅な下げ基調が続いていたが足元では市場の混乱に一服感が出ている。ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は5月1日に1.5%高と、4月初め以降の下落分を取り戻した。
相場反発の背景の一つに、関税政策が米経済に与える影響や貿易摩擦の激化への強い不安が和らいでいることがある。トランプ氏やベッセント米財務長官からは強硬姿勢の緩和を示唆する発言が相次いだ。4月29日には自動車・部品関税の負担軽減措置を発表した。
IT株が相場上昇をけん引
米国と貿易相手国との関税交渉の進展期待も相場を支えている。市場では「多くの国が関税協議に意欲を示しており、トランプ政権側も成果を示すよう圧力を受けている。今後複数の取引やセクターを対象とした関税の除外措置が打ち出される可能性がある」(UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのカート・ライメン氏)との見方が出ている。
トランプ氏によるパウエルFRB議長に対する解任要求の取り下げも市場の警戒感の後退につながった。FRBの独立性への懸念が強まる中、トランプ氏は4月22日にパウエル氏について「解任するつもりはない」と述べた。
S&P500種株価指数のセクター別で見ると、続伸記録が始まる前日の4月21日終値比で最も急伸しているのがIT(情報技術)銘柄だ。特に中国とサプライチェーン(供給網)で密接に結びつく巨大テック銘柄は新政権発足以降で相場下落を主導してきたが、好調な1〜3月期の決算内容を市場が好感しているようだ。
個別では、21日終値比でマイクロソフトやメタが18%、エヌビディアが15%伸びている。米中の関税応酬に伴う景気減速懸念を相殺する好決算が、市場を支えている。
投資家の慎重姿勢変わらず
ただ、このまま一本調子で相場が上昇し続けるとの見方は少ない。新政権発足翌日の1月21日比でダウ平均は依然3200ドル超安い。米証券ミラー・タバックのマシュー・マリー氏は「4月初旬の米株市場は短期的に売られすぎの状態にあったため、(足元の上昇は)反発に過ぎない」と分析する。
米銀バンク・オブ・アメリカ(BofA)は、今後も高いボラティリティー(変動率)が続くとした上で、安定した大型のバリュー(割安)株が有望になると指摘する。経済指標がすでに米景気の減速を示す中、投資家は慎重姿勢を崩さずにいる。